親が一人暮らしのうちにやっておける6つのこと
親が一人で暮らしている。元気だけれど、この先どうなるか分からない。そう思いながら、何から手をつければいいか分からないまま時間が過ぎている——という方に向けた記事です。
亡くなった後に家族が困ることの多くは、生きているうちに手を打てます。しかも、費用はほとんどかかりません。
- 場所が分かれば探す手間が消える。まず「どこに何があるか」だけ
- 賃貸なら、国のモデル契約条項という仕組みがある
- 鍵と連絡先の共有は、いちばん費用対効果が高い
- 片付けは全部やらなくていい。動線と危険な場所だけで十分
1. 「どこに何があるか」を1枚にまとめる
遺品整理でいちばん時間がかかるのは、物を運ぶ作業ではありません。探す作業です。通帳がどこにあるか分からないまま、引き出しを全部開けることになります。
紙1枚で構いません。次の場所だけ書いておくと、後の負担が大きく変わります。
- 通帳・印鑑・キャッシュカードの保管場所(口座番号は書かなくて構いません)
- 保険証券、年金手帳の場所
- 権利証、契約書類の場所
- 貸金庫の有無
- 持ち家か賃貸か、賃貸なら管理会社の連絡先
- かかりつけ医、服用している薬
- 連絡してほしい人(親族、友人、菩提寺)
この紙自体をどこに置くかも決めて、家族に伝えておいてください。
2. 鍵と緊急連絡先を共有する
合鍵を誰が持っているか。持っていない場合、何かあったときにどうやって家に入るか。これを決めていないと、緊急時に鍵屋を呼ぶところから始まります。
賃貸なら管理会社の連絡先、持ち家なら近所で様子を見てくれる方の連絡先を、家族が把握している状態にしておきます。
3. 賃貸なら、国のモデル契約条項を知っておく
単身の高齢者が賃貸に住んでいる場合、亡くなった後の契約解除と部屋の荷物の扱いが問題になります。これに備えて、国土交通省と法務省が2021年6月に「残置物の処理等に関するモデル契約条項」を策定しています。
内容は、賃貸借契約を解除する代理権を第三者に与える契約と、死亡後の荷物の処理を委託する契約の2つです。入居時、契約を結ぶ段階で締結しておくことが想定されています。これから部屋を借りる場合や、更新のタイミングで、管理会社に相談してみる価値があります。
4. 片付けは、全部やろうとしない
生前整理というと、家中を片付ける話になりがちですが、本人が元気なうちに全部やるのは現実的ではありませんし、揉めるもとです。優先順位はこうです。
- 動線の確保。玄関から居室、トイレ、風呂までの通り道に物を置かない。転倒の予防になります
- 階段と廊下。照明が暗い、手すりがない、物が積んであるという状態を直す
- 火のまわり。コンロの周りに紙や布を置かない
- 使っていない部屋。ここは後回しで構いません
「捨てる」という言葉を使うと話が止まります。「使う物を取り出しやすくする」という方向で始めると、進みやすくなります。
5. 価値のある物は、本人が元気なうちに確認する
着物、骨董、古い道具、貴金属、切手やコイン。これらは、本人しか来歴を知らないことがあります。誰からもらったか、いつ買ったか、証書がどこにあるか。亡くなった後では、二度と分からなくなります。
売るかどうかは別として、「これは何か」を聞いて記録しておくだけでも、後の判断がまったく変わります。写真を撮って、本人の説明を一緒にメモしておくといいです。
6. デジタルの情報も残しておく
スマートフォンやパソコンのロック、契約しているサブスクリプション、ネット銀行、SNS。これらは物理的に探せません。解約の手がかりになる情報を、家族が確認できる形で残しておく必要があります。
パスワードそのものを紙に書くのは防犯上の問題がありますので、契約している会社名と連絡先だけでも記録しておくのが現実的です。
統計で見ると
警察庁の発表では、令和7年に警察が取り扱った死体のうち、自宅で亡くなった一人暮らしの方は76,941体でした。内閣府の推計では、死後8日以上経って発見された人は22,222人です。
数字を見て不安になる必要はありません。ただ、「うちは大丈夫」と考えて何も決めていない状態と、紙1枚だけ用意してある状態とでは、家族の負担がまったく違うということです。