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空き家の事故と所有者の責任|民法717条

空き家 公開 2026-09-19

誰も住んでいない家を持っている。遠方なので年に数回しか見に行けない。——この状態には、税金以外のリスクがあります。

建物が壊れて人にけがをさせた場合、所有者が賠償責任を負うことがあります。

この記事の要点
  • 民法717条により、工作物の瑕疵で他人に損害を与えたときの責任が定められている
  • 賠償額の試算として5,000万円を超える例が自治体資料で示されている
  • 国は2026年3月、空き家の火災予防ガイドラインを出した
  • 行政代執行になると、費用は所有者に請求される

民法717条という条文

条文はこうです。

土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない。

建物は「土地の工作物」です。空き家の場合、占有者と所有者が同じであることが多いため、所有者が直接この責任を負うことになります。

参考:e-Gov法令検索:民法

金額の目安として示されている例

東京都日野市が公開している資料には、危険な建築物を放置して第三者に被害を与えた場合の賠償額の試算として、5,630万円および2億860万円という数字が示されています(出典として公益財団法人日本住宅総合センターが挙げられています)。

これは実際の判決額ではなく試算ですが、規模感としては参考になります。屋根や外壁が落ちて通行人に当たる、倒壊して隣家を壊す、といった事態は、現実に起こり得ます。

同資料では、借地上の建物であっても土地所有者に責任が及ぶ可能性がある点にも触れられています。

参考:日野市:空き家の賠償事例(PDF)

火災のリスクについて、国が動いています

消防庁は2026年3月27日、「密集住宅市街地における空き家等に対する火災予防ガイドライン等について」という通知を出しました。2025年11月に発生した大分市の大規模火災を受けたものです。

この通知では、火災予防上、管理が不十分な状態の目安として次のような例が挙げられています。

  • 草木の繁茂
  • 大量の落ち葉・枯れ草の放置
  • 敷地内への危険物品や大量の可燃物の存置
  • 家屋の開口部(扉・窓)の大きな破損
  • 屋根・外壁の老朽化に伴う破損

火災予防条例の例として「空家の所有者又は管理者は、当該空家への侵入の防止、周囲の燃焼のおそれのある物件の除去その他火災予防上必要な措置を講じなければならない」という規定も示されています。

つまり、敷地に物を置いたままにしていること自体が、火災予防上の問題として扱われ得るということです。家の中の片付けだけでなく、庭や敷地の状態も関係します。

参考:消防庁:空き家等に対する火災予防ガイドライン(PDF)

行政が動くとどうなるか

国土交通省の資料によると、令和6年度に空家法に基づいて行われた措置は次のとおりです。

  • 管理不全空家等:指導2,545件、勧告378件
  • 特定空家等:助言・指導4,026件、勧告600件、命令101件
  • 行政代執行71件、略式代執行81件、緊急代執行9件

行政代執行になった場合、費用は所有者から徴収されます。国土交通省のガイドラインでは、国税滞納処分の例による強制徴収が認められ、市町村長は国税および地方税に次ぐ順位の先取特権を有する、と説明されています。

近畿地方整備局の資料には、代執行による除却費用の実例として、約150万円から約850万円までの6件が掲載されています。動産の調査や保管の費用が含まれるため、通常の解体より高くなる傾向があります。

参考:国土交通省:特定空家等に対する措置に関するガイドライン(PDF)

できることは、それほど多くありません

裏を返せば、やることは限られています。

  1. 屋根・外壁・窓の破損を確認する。落ちそうな物、割れている物を直す
  2. 草木を刈る。枯れ草と落ち葉は火災の要因として挙げられています
  3. 敷地の物を減らす。可燃物、放置された家財、廃材
  4. 開口部を塞ぐ。侵入を防ぐことは、火災予防にも防犯にもなります
  5. 定期的に見に行く。行けない場合は、管理を頼める先を探す
  6. 火災保険の契約内容を確認する。空き家の扱いは契約によって異なります

片付けを「いつかやること」にしておくと、リスクだけが積み上がります。中の物を減らすことは、それ自体が管理の一部です。

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